愛知県の自動車盗難が今、記録的な猛威を振るっている。最新の統計によると、2025年1月から10月までの間に、955件もの盗難事件が報告され、これは全国最悪のペースだ。特にトヨタ車が狙われ、盗難車は違法なヤードへと運ばれている。だが、その一方で、法律を守り、正当なビジネスを行う業者の声も聞こえてきた。一体、何が問題なのか？
愛知県弥富市にある中古車ヤードを運営するイスマイル氏は、「真面目にやっている人が困る」と訴える。彼はパキスタン出身で、15年以上にわたり日本車を中心とした輸出業を営んでいる。しかし、近年の自動車盗の増加は、彼のビジネスに深刻な影響を及ぼしているという。特に盗難車が流通する現状に、彼は怒りをあらわにする。「盗まれた車は値引きできる。自分のお金で購入した車と同じ価格で戦うことはできない」と、頭を抱える。
7月の未明、愛知県内の自動車販売店で、監視カメラが捉えた泥棒たちの大胆な手法は、業界に衝撃を与えた。帽子とマスクで顔を隠した2人の男が、スマートに状況を把握し、手際よくトヨタ「ランドクルーザー」を狙う様子は、計画的な犯行そのものだった。たった20分で足かせを外し、エンジンをかけて、持ち去る様子は、まるで映画の一幕のようだ。
このような犯罪が日常化している理由は、愛知県警の山田幸司警部によると、「ヤードの取締りが難しい」という。法律を守って営むヤードと、違法行為を行うヤードを見分けることができないため、捜査が困難になっているという。この現状に対し、KUN氏が率いる「車両盗難厳罰化にする会」は、窃盗罪の罰則を強化し、全国的にヤードを規制する法律を要望している。
「自動車は簡単に売れない、買えないようにすれば窃盗が激減する」とコールするKUN氏の声が、切迫感を帯びている。日本全体に広がるこの問題から目を背けられない時が来ている。犯罪組織は巧妙に分業化され、逃げ道を用意している。一度盗まれた車は、愛知県を越えて千葉県のヤードへと運ばれ、市場で再び流通する可能性が高い。
しかし、イスマイル氏のように、正当にビジネスを行っている業者の存在もある。彼は、「悪質なヤードは我々にとってかなり迷惑だ」と語り、急速に変化する市場での苦悩を明かす。法律を遵守することで、彼は自らの信頼性を築いているが、今後の自動車盗問題への対応に疑問を抱かざるを得ない。彼のヤードでは、厳密に記録された車台番号が必要だが、そのチェックが万全でない現実もある。
愛知県は2019年からヤードの届け出義務を設ける「ヤード条例」を施行しているものの、その実効性が問われている。情報公開請求によれば、95のヤードが届け出を行っている一方で、無届けの「違法ヤード」も存在しているという。この矛盾を解決しない限り、盗難車の流通は続く。
最新のニュース特集「ニュースONE」では、愛知県の自動車盗に関する取材を進めており、今後の動向を注視している。皆さんも、もし何か情報をお持ちであれば、ぜひお問い合わせいただきたい。愛知県内のクリーンな自動車業界を守るために、行動が求められている。
