
東京都 – 日本美術院が、日本画家の梅原幸雄氏に対して下した処分が、東京高等裁判所により違法だと認定され、同院に220万円の賠償を命じる判決が下された。この判決は、45年間にわたる梅原氏のキャリアを守る重要な一歩になると同時に、日本美術界全体が抱える「盗作疑惑」の波紋を再燃させることになった。
問題の発端は、2023年3月に開催された「春の院展」。梅原氏が出品した作品が、別の画家の作品に類似しているとの指摘がなされ、日本美術院の理事会は、氏に対し「1年間の出品停止」という厳しい処分を課した。梅原氏は、構図の類似はあくまで「偶然」であり、盗作ではないと強く主張している。梅原氏の言葉を借りれば、「私は盗作しておりません」。
この処分は梅原氏にとって耐え難いものだった。自らの名誉が傷つけられ、個展を開く機会すら奪われる中で、彼は絵を描く気力を失い、深い絶望に苛まれた。記者会見での彼の表情には、長年の苦悩と屈辱が色濃く表れていた。
判決が下された後、梅原氏は胸の内を語り、「今日の判決により、私に対する日本美術院の処分が違法であり無効であったことが認められたことは、嬉しく思います」と述べた。彼は同時に、自身を盗作作家とするレッテルがもたらした苦悩の日々を告白し、「私の45年間の日本画家としての人生は消し去られたも同然です」と語った。
梅原氏は、今回の事件で自らの作品の「制作過程」を公開し、盗作ではないことを証明するための証拠を提示した。その中には、女性モデルを参考にしたポーズや構図の詳細が含まれており、実際にどのようにして作品が創り上げられたのかが説明された。渥美陽子弁護士によると、スカートのボリュームについては、実際に何度も修正が加えられたとのこと。
「偶然似てしまったものを描いてはいけないと言われたら、富士山なんか描けない」と、梅原氏は嘆いた。彼の言葉には、日本画家としての自由と創造性を奪われる懸念がにじみ出ている。
一方、日本美術院は、「判決文を受け取っていないのでコメントは差し控えます」とし、沈黙を貫いている。この問題に関して、業界の声もさまざまで、専門家たちは今後の美術院の方針や、作品創作に向けた認識がどのように変わるのか注視している。
この判決は、日本美術界が盗作の疑惑にどのように対処し、作家たちの創造性をどう守るのかを問う重要な契機になるだろう。梅原氏の戦いは、単なる個人の運命に留まらず、日本文化の根幹にかかわる問題であることを、私たちは忘れてはならない。
この事件の行方や、美術院の今後の対応に引き続き注目が集まる中、私たちはさらなる情報を待ち望みつつ、今こそ日本美術界の透明性と公正を求める声を上げるべき時だ。
