クマ出没9079件、死者は過去最多5人 異常事態の一年…岩手県で広がるクマの脅威

2025年、岩手県が直面した危機的な状況は、地域住民の安全を揺るがすものでした。県内で記録されたクマの出没件数は9079件に達し、過去最多の5人が命を落としました。この異常事態は、岩手県の住民に深刻な影響を与え、安全な生活が脅かされています。

4月2日、岩手めんこいテレビのカメラが捉えた一瞬、クマが集合住宅の敷地内に足を踏み入れ、住民たちは驚愕の声をあげました。記者が「クマ!クマ!クマ!」と叫んで警告する場面は、かつてはほとんど目にしなかったものであり、2025年にはその異例の回数が明らかになりました。

前年は全く撮影されることがなかったクマが、今年はわずか数ヶ月の間に14件も撮影されたことは、まさに「異常事態」を物語っています。特に、10月には3084件の出没が確認され、県全体での出没件数の3分の1が集中しました。盛岡市本宮の原敬記念館周辺や北上市など、多くの住宅街でクマの目撃情報が寄せられ、地域住民は恐怖に怯える日々を送っています。

恐ろしいことに、ただの無防備な一瞬が命取りになることもありました。温泉の清掃中にクマに襲われた従業員の遺体が発見された事件や、住宅の庭で犬と共に死亡していた高齢男性の悲劇は、地域の人々に深い悲しみと不安をもたらしました。この半年間だけでも、岩手県内での人身被害は38件に上り、死者数は過去最多の5人に達しました。

この異常事態を受け、県は緊急対応策を次々と打ち出しています。9月から導入された「緊急銃猟」の制度は、自治体が判断を下し、必要に応じて発砲できるというもので、一部の市町では早急に対応の手順が確認されました。11月20日には洋野町で初めての緊急銃猟が行われ、6日後には釜石市で木に居座ったクマに対して実施されました。このような対応がなされる一方で、専門家たちはクマの生息域の縮小と食糧不足が出没の頻度を増加させる要因になっていると警告しています。

東北森林管理局が行った調査によると、ブナの実の豊作から貧作への遷移が確認され、クマが丘陵から降りてきて人間の居住空間に出没する確率が格段に増加していることが分かりました。「人間とクマの出会いは、10年前と比べても各段に増えています」と、森林総合研究所の専門家は述べています。

山中から人間の生活圏へと侵入してくるクマたちに対して、岩手県はより厳格な対策を講じることを余儀なくされています。12月には盛岡市で新たに麻酔の吹き矢を扱う人材が養成される方針が発表され、また、県は緩衝帯整備のための2億円以上の補正予算を議会に提出する予定です。

この恐怖の年、2025年の世相を象徴する漢字として選ばれた「熊」は、今後も私たちの生活にどのような影響を及ぼすのか、地域の安全を確保するために何が求められるのか、考え続けなければなりません。地域住民は、今後も繰り返されるクマの脅威に対し、どのように対処していくのか、危機感を抱きつつ見守らざるを得ない状況です。岩手県民の生活が、一日でも早く安全に戻ることを切に願います。